広告業界のキャリアを考えるブログ

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なぜ広告業界は長時間労働になってしまうのか?広告業界の中から考えてみた。

昨年、電通の新入社員が過労を理由に自殺するという本当に痛ましい事件がありましたね。

この自殺の原因の一つとして、”月の残業時間が105時間を超えていたこと”が問題視され、この事件以降、日本全体で「労働改革をしていかなければ」という空気になっています。実際に改革に乗り出している企業も多々あります。

ただその労働改革についても、本当に現場で働く人たちのことを思って実行しているのか?国や世間の目を気にして、数字としての残業時間を減らそうとしているだけなんじゃないのか?というのは個人的に疑問に感じています。

「予算目標は変えないし仕事も減らさないけど、残業時間はとにかく減らせ!」みたいな。そんなのただの無茶振りじゃないかと。そんな上からの号令を受けて、家に仕事を持ち帰ったり、早朝に出社して仕事してるなんて人もいます。

このあたりの問題については、サイボウズさんの「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。」の特集がとても参考になります。ぜひこちらの記事を読んでこれからの働き方について思考を巡らせてもらえればと。様々なヒントが散りばめられた良質な記事ばかりです。

それでは本記事では、様々な業界があるなかで「広告業界がなぜ長時間労働になってしまうのか?」というテーマについて、広告業界で今も働くイチ社員の視点から考えてみます。

正解がないからこそ、最善を求めてしまうプロ気質

広告は、常に新しいことを求められます。なぜなら、人の心を動かすことで商品を買ってもらうことが広告の目的だからです。人は見飽きたものには心を動かされません。

新しいということは、つまり前例がなく正解がないということ。質にこだわろうと思えば際限なくこだわることができてしまうのです。

そして、時間をかけてでもアウトプットの質に徹底的にこだわるプロフェッショナル達がこの業界にはたくさんいます。

そしてこのプロフェッショナルの先人たちによって広告業界が発展してきたというのもまた事実です。ですがこのモデルが今の時代にも合致しているのか、というのはきちんと見つめ直す必要があると思います。

この仕事の特性自体はビジネスモデル自体を大きく変えない限り難しいと思っています。さらに一番問題だと思うのは体育会的な「長時間労働」や「徹夜」への美学です。

電通の4代目社長吉田秀雄によって作られた「鬼十則」という行動規範の言葉にもこんな言葉があります。

「5. 取り組んだら放すな。殺されても放すな。目的完遂までは……。」

ある意味とても電通らしい言葉ですね。実際こうした行動規範に基づいた今までの電通社員たちの血の滲むような努力の積み重ねあったからこそ、今の電通の地位があるのだと思います。

しかし電通の新入社員は実際に”目的完遂”の前にその命を落としてしまったのです。命より大切な目的なんて今の時代あるものなんでしょうか。戦国時代じゃないんですから……。

また実際電通以外の会社でも、

「徹夜してでもいいものを仕上げ、納品する。それが広告マンの仕事だ。」

そんな風に思っている人がなんと多いことか。

その価値観自体は否定しません。否定はしませんが、その考え方こそが労働時間が長くなっている大きな原因の一つになっているのです。

ただ難しいなーと思うのが、そういう人って仕事ができる人も多く、実際に仕事のクオリティが高いことも多いんですよね。そして人柄も尊敬できる人も多い。(当然なかにはそうではなく、だらだらと時間だけかけて仕事をしてる人もいますが。)

しかしこうした考え方の蔓延が業界全体の労働時間を伸ばしてしまっているのも事実なのです。

絶対的な「クライアント>>>広告代理店>>>>>外注」の構図

こうした上下関係の構図は広告業界以外にも当然あると思いますし、苦しめられている人も多いことと思います。

広告業界はこの会社ごとの上下関係がとにかく厳しいです。

その理由としては広告ビジネスというものが、クライアント側が発注をかけるにあたって、会社ごとのクオリティを数字などで可視化するのが難しいからです。

競合プレが頻繁に開催されるのもこれが理由です。競合プレは特にクオリティにこだわりたいような規模の大きい大型キャンペーンでよく実施されます。

では競合プレにかけるほどでもない定常的な業務の発注の基準は何になるのでしょうか?

もちろん会社の知名度や過去の実績なども考慮されますが「その担当者および会社を信頼できるか、気に入っているか」に大きく左右されます。かなり主観的な判断基準です。それしか判断基準がないのだからこれは仕方ないことです。

そしてクライアントから気に入られなければ、他のライバル代理店にごっそり仕事を持ってかれてしまう可能性があります。

他社からのアカウント奪取を恐れ、特に数十年前などはクライアントへの過度な接待などが横行し、それが広告業界のバブリーなイメージ形成にも繋がっています。さらに「クライアントはお客様であり神様」なので、どんな理不尽や無茶振りにも応えるのが当たり前で、それこそが最大の価値だったです。

例えば、夜23時に、クライアントから「明日のお昼までにこの企画のアイデアを考えて企画書にまとめてくれませんか?昼間の会議で必要なので。」と言われたら、睡眠を犠牲にしてでもそのオーダーに応えるのが当たり前だったのです。

今時ここまでひどいクライアントもいないと思われるかもしれませんが、クライアント社内の調整ミスなどでこれに近いことはわりと日常茶飯事だったりします。クライアントのミスのつけが代理店におりてくるのです。そしてそのツケはさらに代理店から発注される制作会社にも回ってきます。

こんな馬鹿らしい価値観からはいち早く脱却するべきですよね。クライアントと代理店はあくまでビジネスの関係であり、代理店サイドは”広告においてのプロフェッショナル”としてクライアントと対等な関係を築くべきなんです。

無駄な接待が減り、徐々にそうした方向にシフトしてきているのも感じてはいますが、まだまだまだまだこうした価値観は、根っこの部分で根強く残っているように思えます。

では、どうすれば広告業界の長時間労働は改善できるのか?

それをこの業界は真摯に考えていかなければなりません。ぼく自身まだ答えを見いだせているわけではありません。

ただ、一つだけ分かるのは、広告という仕事に携わる、代理店、制作会社、クライアントなど関係者全てがこの問題に試行錯誤しながら向き合っていく必要があるということ。

「自分は仕事が好きだから何時間でも働ける。だから自分には関係ない。」こう思っている人も多いはず。

でも待ってください。そんな風に考える人が多ければ多いほど、そうした働き方を求めない優秀な人間は業界を去っていきます。優秀な新人も他の業界にとられてしまうでしょう。

そうすると、徐々に徐々に、業界は縮小していってしまうでしょう。本来ならワクワクするはずの広告という仕事が、少しずつ、少しずつ、気づかないうちにつまらないものになってしまうかもしれない。

そんな危機感を、全ての人が持つべきなのです。 

終わりに

さて、本記事では広告業界が長時間労働になってしまう背景について書いてみました。

この記事を読んでいる方の中に広告業界やそれに関わる業界で働いている方がいましたら、ぜひ、あなたなりにこの問題について考えてみてください。

ひとりひとりの意識や行動を変えていくことなくしてこの業界が変わることはないと思っています。

ぼく自身、広告業界の今の状況を憂いているものの、「広告の仕事は楽しく、社会的に意義のあるものだ」と思っています。少しでもこの業界が働きやすい環境になりますように。

最後までお読みいただきありがとうございました!それでは。